新しい糖尿病治療薬

ここ数年、糖尿病の治療薬は新規のものが相次いで発売されており、糖尿病を専門にしている医師でも薬剤名や、その作用の仕方、投与量の組み合わせなどを把握するのは大変になってきています。今日はそのなかでもいま一番、話題になっているSGLT2阻害薬というお薬の話題を取り上げたいと思います。

糖尿病になると尿にブドウ糖が漏れるため、「オシッコに糖が出てますよ~」と言われてしまいます。この尿糖を調節しているのがSGLT2という腎臓で働いている物質です。正常な状態ではSGLT2は尿にブドウ糖が漏れていかないように働きますが、糖尿病ではその働きが行き過ぎて、尿に漏れたブドウ糖を体の中にさかんに取り戻そうとします。そうすると、糖は体の中に、つまりは血液中に戻ってきてしまうので血糖が高いままになってしまいます。

SGLT2阻害薬というのは、SGLT2が尿中のブドウ糖を血液中に戻そうとする働きをほぼ止めてしまうので、尿糖がたくさん出るようになり、結果として血糖値も少しずつ下がっていきます。しかし、尿糖が増える結果として尿の量が多くなり、服薬後の数時間はトイレに行く回数が増えることが多くなります。また脱水症状や膀胱炎なども起こしやすくなる患者さんもいらっしゃるので注意が必要です。一方、尿に多量の糖が出て行くと体はブドウ糖が足りなくなったと感じるため、体内の脂肪を燃やして新たにブドウ糖を作ろうとします。脂肪が燃えるため、少しずつ体重も減ることが多いです。最初の3ヶ月で体重はおよそ2~3kg減りますが、そのあと更に減り続ける患者さんは少ないようです。やはり日々の食事の注意や、運動も続けることが治療の基本です。

この系統のお薬は2014年8月現在、国内では4種類5品目が発売されています。現時点では発売後間もないお薬に関する取り決めのため処方は2週間分までに制限されていますが、当院でも処方を開始しており、血糖、HbA1c、体重の低下などに一定の効果が得られています。今後も効果だけでなく、副作用にも注意しながら使用したいと考えています。