インスリンの脳内での役割

先週(5月24~26日)は東京で開催された日本糖尿病学会に参加のためお休みさせていただきましたが、そこで学んだことを要約してお知らせしたいと思います。

インスリンの作用が不足すると血糖値が上昇し糖尿病を発症することはよくご存知と思います。このインスリンは脳内にも存在し、その作用が脳の働きに影響していることが解明されてきました。人体は1日あたり約250gのブドウ糖を消費しますが、その半分は脳が消費すると言われていて、脳はブドウ糖が大量に必要な臓器であり、インスリンも必要と考えられています(ブドウ糖消費のすべてにインスリンが必要ではありませんが)。

アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内ではインスリンの作用が弱っている(インスリン抵抗性といいます)ことが明らかになっています。アルツハイマー病の初期は「匂い」の感覚(嗅覚)が鈍くなっていると言われていますが、そのような患者さんに鼻からインスリンを吸入してもらうと記憶力や認知機能の改善がみられることが報告されています。また、インスリンは脳内で食欲のコントロール、海馬での記憶能力などにも大きな役割があります。インスリンの作用不足は脳内での炎症の発生、血管へのダメージにもつながると考えられ、それらがさらにインスリンの作用を悪くしているとも考えられています。

脳内でのインスリン作用を取り戻す治療ができるようになると、アルツハイマー病や糖尿病の治療にも役立つと考えられ、今後の研究の発展が期待されます。(文責:渡辺淳)