インクレチン注射薬が効く体質と副作用

私たちが食事をしたとき体内の血糖値は直ぐに上昇し始めますが、際限なく上昇すると不都合なので膵臓からインスリンというホルモンが血中に分泌され血糖値を調節してくれます。正確には食べ物が胃から小腸に送り込まれたとき、食べ物の栄養分に反応して小腸からインクレチンというホルモンが分泌され、そのホルモンが血流に乗って膵臓に運ばれるとインスリンが血中に分泌されるという順序です。

インクレチンは主にGLP-1とGIPの2種類あることがわかっています。これらは本来はインスリンを増やして最終的には血糖値を下げるホルモンですが、同時に食欲を抑えたり胃腸の動きを抑えて食べ過ぎや体重が増えないようにする作用もあります。この作用を利用して糖尿病患者さんの血糖値を下げたり、食欲を少し抑えて体重が増えないようにする目的の注射薬が医師の指導のもとに世界中で使われています。

ただ、この注射薬は人によってはあまり効かないばかりか、吐き気がひどくて長期間使い続けることができない患者さんも多くいらっしゃいます。なぜインクレチン注射が効きにくい人や副作用が強く出てしまう人がいるのか、そんなの「食べすぎているからでしょ!?」と片付けられていたのですが、最近の研究の進歩により理由が少しずつ分かってきました。参考)Nature653:770-775、2026

注射されたGLP-1はGLP-1受容体(GLP-1R)に結合して作用を発揮しますが、このGLP-1Rに特定の遺伝子変異があると体重減少などの効果が大きい傾向があることが分かってきました(まだ100%断定はできません)。

次に副作用(吐き気)についてですが、GLP-1とGIPを混合した注射薬を例にお話したいと思います。GIPは吐き気を和らげる作用もあるホルモンですが、このGIPはGIP受容体(GIPR)に結合して作用を発揮します。GIPRの特定の遺伝子変異を持つ人は吐き気、嘔吐が起こりやすい、言い換えればGIPの嘔吐を抑える作用が弱いということが推測されています。

以上のようにインクレチン注射の副作用も含めた効き方には遺伝による個人差があることが分かってきました。今後は個人差があっても一定の効果があり、副作用が起こりにくいお薬が開発されることを期待したいと思います。