糖尿病とは
糖尿病とは「インスリン」という膵(すい)臓から分泌されるホルモンが不足したり、その働きが悪くなって血液中のブドウ糖(血糖)が多くなりすぎた状態(高血糖)が長く続く病気です。高血糖状態を放置すると、合併症がおこり日常生活に支障を来すほか、生命を脅かされることもあります。
発病の原因としては生まれ持った体質(遺伝)と環境因子、たとえば食べすぎ、運動不足、ストレスなどが複雑に絡み合っていると考えられています。
ここでは糖尿病の合併症(余病)にはどのようなものがあるのかを紹介するとともに、その治療方法についても説明します。
以前から糖尿病の三大合併症として知られているのが、以下の3つの病気です。
網膜症
糖尿病が発症して数年の経過で出現することが多いです。
最初は専門の眼科医師の診察でわかる程度の小さな出血が眼底(網膜)に出現します。それを放置すると出血がひどくなって最悪の場合、失明(目がみえない)することもあります。
早期発見・治療のため、年に1~2回は眼科での診察をお受けください。
腎症
尿にアルブミン(タンパク)が出現します。血圧が高くなることが多いです。進行すると腎臓の働きが障害されて血液中にさまざまな毒素がたまり(尿毒症)、むくみ(浮腫)がひどくなり、透析治療を受けねばならなくなることもあります。
悪化させないためには、食事でのタンパク質の摂り過ぎに注意すること、塩分を
控えること、血圧・血糖・脂質などをできるだけ正常に保つことが必要です。
神経障害
足の神経が障害されて、しびれ、痛みをともないます。足のウラの感覚が無くなることもあります。自律神経が障害され、立ちくらみ、胃腸の運動異常(便秘、下痢など)、発汗異常などもおこります。足の小さなケガを放置すると壊疽(えそ:足指が腐る病気)になることもあります。
動脈硬化症(脳梗塞や心筋梗塞など)
今まで述べた三大合併症は最近は減りつつありますが、生活習慣の欧米化にともない、動脈硬化症が増えてきています。高齢になれば誰にでもある程度はおこるものですが、糖尿病の患者さんは比較的、若いうちに脳梗塞や心筋梗塞などを発症し、生命が脅かされたり、日常生活に支障を来してきます。いずれの合併症も血糖値や血圧、血液中の脂質(コレステロールなど)が高いまま放置しているとゆっくりと進行し、全身に様々な病気が起こってきます
糖尿病治療の目標
合併症を防ぐためには血糖値はどれ位に下げておいたら良いのでしょう?
日本糖尿病学会では最近の血糖の平均値を表す指標HbA1C(ヘモグロビンA1C)を7.0%未満に保つことを推奨しています。
また動脈硬化症については食後の血糖値も180mg/dl未満に保つことが望ましいとされています。
血圧や血中脂質、尿酸値などもできるかぎり正常化することが大切です。
食事療法、運動療法を主として治療していきましょう。場合によってはお薬も必要です。
食事療法については管理栄養士が助言や指導をおこないますので、ご相談ください。
ヘモグロビンA1c(HbA1c) エーワンシーと略して説明されることが多いです
HbA1cは採血時点から1~2ヶ月前までの血糖変動の平均値を反映する指標です。
そのため、糖尿病の診断や治療の目安に使用されますので、この言葉に慣れておかれてください。
血液の色が赤いのは酸素を運搬する「ヘモグロビン」という色素が赤い色をしているためですが、
ヘモグロビンは血液中のブドウ糖と出会う回数が多い(血糖値が高い)と、ブドウ糖と結びついて
ヘモグロビンA1cという物質に変わります。ですから、ヘモグロビン(HbA1c)値が高いということは
過去の血糖値の平均も高かったことを示します。
正常値は4.6~6.2%です。この値が6.5以上では糖尿病の疑いが濃くなります。
糖尿病治療中の方はHbA1c値が7.0%未満となることを目標に努力しましょう。
HbA1c 5.4 7.4 9.4 %
血糖値 100 150 210 mg/dl
生活習慣病
食事内容のかたより、食べすぎ、運動不足、ストレスなどが重なって発病する病気の総称です。
糖尿病、高血圧、高脂血症、痛風(高尿酸血症)など、とくにメタボリック症候群とも密接な関係があります。